ジェット機のプラモデルを筆塗りで仕上げてみようと思った。筆塗りの記事を書いた時に、今どきの筆塗りシーンをあたってみたら独特な方法でとんでもなく綺麗な作品に仕上げることが出来るという本の存在を知り、自分でも試してみたくなったからである。
それがこの本、「田中克自流飛行機模型筆塗り塗装術」である。
実際に中身を読んでみると、どうやらアクリジョンでは向かない方法のようだ。特に、非常に薄めた塗料を重ね塗りするにあたり隠蔽力をさほど落とさないための工夫は、一度乾いたら溶剤では落とせないという性質をもつアクリジョンでは真似ができない。しかしながら、薄めた塗料を重ね塗るという部分についてはアクリジョンで真似ができるはずで、大きい平筆ではなく細かい筆で同じことをしてみたらどうなるだろうという興味が湧いてきたので、これをあえてジェット機の模型でやってみようと思ったのだ。
今回作ってみるのは、ハセガワの1/72 ミラージュF.1Cのキットである。

発売されたのは1983年の5月ごろ。発売当時、模型屋でたまたまみかけたこのキットを購入、そのまま作ることなく実家に埋もれているはずである。写真は、その当時のものではなく新たに購入したもので、絵柄は同じだがパッケージデザインが異なる。それから、発売当時のものは成型色がもっと濃いグレーだった気がする。
歴史的にはこのキットはハセガワ最後の凸モールドの1/72キットである。ハセガワの次の製品であるシーハリアーは発売予告から随分遅れて販売されたが、この時に以降のハセガワ製品は全て凹モールドで開発されることになるというアナウンスがあったのだ。
出来はというと、当時のハセガワスタンダードなもので、シャープな凸モールドと、複雑な脚周りをうまく表現している好キットと言えるものだった。ボックスアートも機体のシャープさよりもむしろ脚周りを見せ所とした印象的なものだったと思う。立ち姿のパイロットと搭乗用のはしごがおまけとしてついており、簡単な地上シーンができあがるという遊び心も当時のハセガワとしては珍しかったが、これは、当時タカラが1/100でシリーズ展開していたエリア88の影響があったように思えたものだ。

組立は、最近のキットに比べると至ってシンプル。シンプルな構成のコクピットを胴体で挟んで翼をつければほぼ完成。最近では、流し込み接着剤のおかげで胴体の接着時に、余分な接着剤で機体をベトベトにすることもなくすぐに形になる。翼の角度については左右のバランスを見ながら修正の必要があるってのが最近のキットにはない作業かな。

今回は塗装を楽しみに作りたいので継ぎ目消しは最低限で機首と上面のみ、下面は適当に仕上げてお茶を濁した。それにしても、この機体は本当にシャープでカッコいい。カッコいいけど無個性なんだよなぁ、他のミラージュのようにデルタ翼などのキャラ性もないし。でも、無個性なカッコ良さってのは、誰が見てもカッコいいってことでいいんじゃないでしょうか。

継ぎ目消しで消えてしまったモールドは、上面と機首に関しては、消えてしまった線のあった位置をカッターの腹で押すように筋を入れると、筋の両端が盛り上がるので凸モールドっぽくなる。よく見ると違うものなんだけどどうせそこまでちゃんと見ないし問題なし。

目盛りのついた直線部だけでなくRのついた端部も意外と重宝する。
継ぎ目消しで思い出したが、パーティングラインの処理は、カッターの刃を立ててカンナのようにして(なぜこれが「カンナのよう」なのかは昔から疑問なのだが)削ると良いとされている。ヤスリなどと比較するとザクザク効率よく削れる(削りカスが大きい方が切削効率が良い)のだが、カッターの刃でなくともエッジが鋭くて硬い板状のものがあれば良い。カッターでも良いのだが、カッターは本来切る道具で、刃先の角度が小さすぎちょっとした凹凸で引っかかったり部品の表面に切り傷をつけてしまう可能性がある、刃の厚みが薄くてビビりやすくそれが表面の仕上げに影響するなど、問題点がないではない。
そこで、昔からこのような用途のために、プラカンナ(ボークス)とかセラカンナ(ボークス)、その他キサゲに似た工具が市販されているが、いずれもお高い。そこで、安くておすすめなのがステンレス製の定規。端部の角度は直角なのだが、エッジはちゃんと生きておりスチロール樹脂ならサクサク削れる。直線部だけでなく、反らせて使えばやや凹面を削ることも出来るし、Rのついた端部を使えばある程度の凹形状にも対応できる。
どこかで聞いた話だが、航空自衛隊には展示や(戦術?)検討のための模型を作る部署があり、そこでは使い古した金属ノコの刃から削り出したこの手のオリジナル工具があるらしく、様々な凹形状Rに対応できるよう各種R対応のものが揃えてあるそうだ。
塗装を楽しみたい場合は、このくらい簡単に組立が終わるくらいのものが丁度よい。大体組み上がったところで塗装開始。かなり薄めた塗料を細い筆で根気よく塗る。まずは練習がてら裏側から。

うーん、薄いので色が乗っているのかよくわからない。写真は1度しか塗っていないところと、2度塗ったところと3度塗ったところが混在している状態。主翼は1度のみ、機首と胴体下部前側は2度、胴体下部後部と尾翼は3度。まだ色が薄いのでムラムラな感じだが、塗料の濃さに気を配りつつ薄く塗ることを心がけている限り筆跡は出にくい。塗料の薄め具合は、塗料3滴程度に対して水一滴、薄め液一滴、水性アクリル薄め液一滴くらいの割合。このくらい薄めると塗料がプラモデルの表面で弾かれてしまうので、水性アクリルの薄め液を混ぜる。
ただ、塗装中、塗料が濃くなっていることに気づかずに塗ってしまうと筆跡がつく。また、塗料を多く筆に含ませすぎると半分垂れてまだら状になる。そのまま色を重ね続けることでリカバーは可能だが、できればこういう状況は避けたい。なお、塗装中に塗料が濃くなった場合は水性アクリルの薄め液を足して薄める。水や薄め液を使うと表面で弾かれやすくなるからである。

機体の上面。インテークを固定する時に、周辺部を塗装する必要があったので、上面も少し塗装した。一回塗りだと殆ど色がつかないのがわかると思う。ここで焦ってボテッと塗ると大変なことになるので焦りは禁物。
塗装するのを楽しみに作り始めたのだが、長くなってきたので今回はここまで。塗装は次回ということで。
今回制作したキット ハセガワ1/72 ミラージュF.1C


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