
こんにちは、ヨハン.セバスチャン.バッハです。私の息子たちもそれなりに有名なのでフルネームでの自己紹介です。
今回もロボットアニメブームについて、自分の経験を交えながら懐かしんでみたいと思う。

うむ

前回から気になっているのだが、君は自己紹介をしないのか? フェリックス君。

ちーす、フェリックス・メンデルスゾーンっす。歴史上メンデルスゾーンは何人かいるんで、とりあえずフェリックスでいいや。それから、80年代前後のキャラクターだが、実はこの時代のことはあんまり詳しくないんだ。
そんなことより早く話を進めてくれ。

それならば話を進めよう。
前回からの続きだな。
ガンプラブームが火付け役となってリアルロボットアニメがブームとなった。その中で、ガンプラブームそのものをアニメの企画として取り入れた「太陽の牙ダグラム」と、ガンダムの生みの親である富野由悠季が送り出した「戦闘メカザブングル」が生まれた。
ダグラムとザブングルのプラモデルは、ポストガンプラ第一世代として1982年を彩ることになったのだが…

その前に、今更で悪いんだがいいか?
ガンダムとザブングルの間にイデオンがあるけど、これについてはスルーで良いのか?

リアルロボットアニメという視点で語るのであれば外せないピースと言えるだろうが、プラモデルと連動したブームを語る上ではとりあえずスルーで良いだろう。
理由は、放映時期が1980年5月~1981年1月とガンプラブーム前夜であることと、ガンプラブームの最中にあってはガンダムシリーズ以外のプラモデルはブームの牽引役を担うことがなかったという2点だな。

確かに、イデオンのシリーズを集めていたという知り合いはいなかったな。

今になって考えてみると、三脚ロボットというのは面白いと思う。機会があればイデオンのプラモデルについても何かしてみたいところだ。イデオンのシリーズは探せば当時のものが入手しやすいというメリットもあるしな。
ま、話を先に進めよう。
5. 意外と早かった「夏至」への到達

前回は、ダグラムとザブングルの登場と、1/100ウォーカーギャリア発売中止事件とその後までだったな。
ちなみに、このサブタイトルはモデルグラフィックス2010年6月号から拝借した。この「夏至」って表現がリアルタイムでブームの中に身を置いた自分にとってものすごくしっくり来るんだ。

夏至ってのはどういうことなんだ?

日照時間が最も長かったと感じたとき、ブームのピークを例えたものだと思ってくれれば良い。

なるほど、それは分かりやすい比喩だな。
で、その夏至とやらはいつ頃になるんだ?

モデルグラフィックスの対談記事では、1/100ウォーカーギャリア発売中止事件の辺りだと言われているな。自分もこの見解に賛成だな。
それまでは、前進あるのみという空気だったのが、これ以降は撤退の準備をしつつ前進、という雰囲気に変わった。というよりプラモデルを買う子供にもそういう空気の変化が分かりやすく感じられたのが1/100ウォーカーギャリア発売中止だった、ということかな。

ポストガンプラ第一世代半ばですでに夏至に達したというわけか。思った以上に早いんだな。

ブームとしてのピークの時期は比較的早くに訪れたが、ブームそのもののエネルギーが大きく、まだまだロボットのプラモデルは売れていたんだ。夏至の後に夏が来る、あれみたいなものだと思えばいい。

じゃ、これから真夏の話になるってわけだな。次はダンバインとボトムズだな。

いや、その前に1982年でまだ取り上げるべき話題が残っているんだ。
「超時空要塞マクロス」と「SF3Dオリジナル」だな。
6. 後世への遺産

「超時空要塞マクロス」はリアルロボットアニメとされているが、個人的には他のリアルロボットの路線とは少し違ったものだと思っているんだ。

でもプラモデルと連動した作品という意味ではリアルロボットアニメで良いんじゃないか?

そうなんだ、確かにマクロスはリアルロボットアニメなんだが、ダグラムやザブングルとは違うものを見て制作された作品と言えばいいのかな、とにかくリアルロボットアニメの「リアル」にそれまでとは違う意味づけをした最初の作品のように思えるんだ。

でもVF-1バルキリーは実在の戦闘機(米海軍のF-14トムキャット)をモチーフにしているじゃないか。

形状的なデザインはその通り。だが、本来戦闘機のエンジンが配置されている部分が折れ曲がって脚になる変形とか、それって実現可能性という意味でリアルと言えるのか? って話。ダグラムやザブングルのメカ(ただし、ザブングルは除く)は、「今はないけど、今後こういうメカができる」と思えるようなデザインがなされている一方、マクロスのメカは当時の中学生の知識レベルで「これは実現不能だろ」ということが皆分かっていた。分かった上で、その「リアル」は受け入れられたんだよ。

マクロス関連のキットはたくさん売れたしな。

リアルロボットが「リアル」と言っても所詮は雰囲気、でもそれで十分ってことを明らかにしてしまったんだな。その結果「リアル」の定義は、これまでとは少し違った、もう少し柔軟な運用がなされていくようになるんだ。

マクロスはアニメ作品としても画期的だったな。当時「萌え」なんて言葉はなかったはずだが、「萌え」的な要素をストーリーの根幹部分に組み込むみたいなこともやったし。今にして思えば21世紀のアニメシーンを先取りしていたとも言えるわけだ。

そ、ダグラムやザブングルがガンプラブームを現在形として見て作られた作品とするならば、マクロスはガンプラブームに乗る形に実装した作品でありながら、そこに込めたものはダグラムやザブングルのそれとは異なるものだったと言える。
結果的に、マクロスは同じ世界設定を維持したまま今に至るまで生き残っている。時代ごとに世界観を切り替えながら生き残ったガンダムとはその辺が大きく異なる。

マクロスについてはわかったが、何故「SF3Dオリジナル」を取り上げる必要があるんだ? これはロボットアニメとは関係無いだろ?

「SF3Dオリジナル」は、HOBBY JAPAN誌の1コーナー企画でアニメとは関係のない作品だが、リアルロボットブームの中で多くのファンを獲得した企画なんだ。後にそれらはプラモデル化されることになるのだが、考えてもみて欲しい、普通、模型雑誌の1コーナー企画のオリジナルメカが模型化されるだろうか?

雜誌の企画が模型化された例というのは他には聞いたことがないな。模型メーカーにしても、よくもそんな企画が通ったもんだ。

模型化されたのは1984年だから時期としてはもう少し先の話だが、SF3Dの模型化が正式にリリースされた時、ファンは狂喜したんだ。リアルロボットアニメの夏至はとっくに過ぎ、番組後半に登場するロボットが模型化されないのが当たり前になりつつあった1984年当時、模型雑誌のオリジナル企画のメカが模型化される。一瞬だが、時計の針を戻したかのような騒ぎになったんだ。
それに、日東科学から発売されたキットが、もうパッケージからして別物のカッコ良さを醸し出していて、キットの出来も神がかっていたからな。発売された当時もファンは大騒ぎだったよ。価格設定は高めで自分には中々手が届かなかったので、シリーズ全部を買うことは出来なかったがな。

しかも、このシリーズはHOBBY JAPAN誌での連載終了後、紆余曲折を経て「マシーネン・クリーガー」と名前を変えながら今まで生き延びて来たんだ。最初のプラモデルを発売した日東科学は事実上模型からは撤退しているが、他のメーカーがそれを引き継ぐかのように(実際に金型を引き継いている場合もあるが)シリーズは継続され、細々とではあるが新規製品も発売されているんだ。

SF3Dも名前は変わっても中身はそのままに時代を生き抜いてきた、というわけだな。マクロスの場合とは違って、深海で形を変えずにひっそり生き延びたという印象だが。

どんな形であれ、生き残っていることが凄いことだよ。
7. "リアル"の分岐点

前置きが長くなってしまったが、1983年の話をしようか。

うむ

1982年のリアルロボットブームを牽引してきた作品であるダグラムとザブングルの放映が終了し、後番組として放映されたのが「装甲騎兵ボトムズ」と「聖戦士ダンバイン」なのだが。

どちらも全く似てないよな。特にダンバインはこれまでの作品とはまるで違う世界観だよな。中世風の異世界を舞台に昆虫だか怪獣だか分からないフォルムのメカが飛び交って戦う、と。

先程マクロスで「リアル」の意味が拡張され、より柔軟に運用された、って話をしたけど、ダンバインはそれを更に大胆な形で拡張を試みたものと言える。
曲線基調のメカデザインというのもあるが、金属ですらないメカは、獣から作るだのといった設定とともに「リアルとは何ぞや」という問いをファンに投げかける形になった。オーラバトラー(ダンバインに登場するロボットの一般名)はリアルなのか、と。

「リアル」かどうか、なんてそんな大した問題なのか?
バイストン・ウェル(ダンバインの舞台となる異世界)なんて「海と陸の境目にある世界」ってことなんだろ? オーラの力が物理的な作用をもたらす世界でリアルが何かなんて意味があるのか?

21世紀に住む我々にとって、異世界もオーラもファンタジーもそれほど珍しくないからな、フィクションの中でファンタジーも魔法も現代科学も並立しうる価値観を持っている。しかし今から30年以上前、現用機械の延長線上で「リアル」を語っている中で、いきなり異世界で中世でファンタジーでオーラ力で動く機械って話をされたら普通は戸惑うだろ?
だが、異世界で中世でファンタジーでオーラ力なメカも結果としてはファンに受け入れられるんだ。当時、オーラバトラーの材料はバイストン・ウェルに住む獣から取った、などという話から、モデラーの関心は、バイストン・ウェルにおけるリアルを追求するという方向にシフトすることになったんだな。
つまり、「リアル」とは「その物語世界における現実性」と解釈されるようになったんだ。

今まで見たことも聞いたこともないような要素をそれだけ一度に打ち出されて、そんなに簡単に受け入れられるものなのか? 「昨日までのリアルの意味が今日から変更になりました。」みたいな話をすぐに受け入れることは、少なくともオレには無理だと思う。

実のところは、言うほど簡単に全体のシフトが起こったわけじゃないんだ。
実際、ダンバインはオトナの事情(玩具の売上不振)で後半の舞台を地上に移し、現用兵器を相手に戦うことになったりしたんだ。実際、地上を舞台にした後半の方が面白いと感じられたからな、当時は。
それから、不幸なことにダンバインに登場するオーラバトラーのデザインにプラモデル開発サイドのセンスが追いついていなかった部分がある。オーラバトラーのプラモデルは総じて出来が良くなかったんだ。

なるほどな。プラモの出来の問題は難しいな。実物や実物の図面から寸法を起こして作るわけじゃないからな、こういうロボット物は。

実は、当時は小遣いをダグラムとボトムズに全投入していたのでダンバインのプラモデルはほとんど作ったことがないんだ。ダーナ・オシーのキットは思ったよりも良かったと記憶している。パッケージの完成品写真がカッコ悪いので出来が悪いという印象だったのだが、実際に作ってみるとダーナ・オシーのイケてない感じがうまく出ていて、しかも思ったよりもカッコ良いという。逆に1/72ビランビーはどうしようもなかったな。改造するつもりで切り刻んだビランビーが実家のどこかにあるはずなのだが。

そういう思い出話はいいから。

いやいや、ここはそういう思い出話をするところでしょ。

要するに、ダンバインはいろいろな意味で早すぎた作品だった、ってことだな。

そうとも言えるが、この時期にダンバインがあったからこそ、サブカル界隈にファンタジーな世界観に対する免疫が出来たとも言える。
翌年の1984年にハイドライドやブラックオニキスなどファンタジーな世界観を持つ和製RPGがブレイクするんだが、その人気はダンバインの存在によって出来た下地の影響があるように思えるんだ。 当時モデラーとPCゲーマーは年齢的に割と重なる層だったこともあったんじゃないかな?
また、ダンバインの放映後もダンバインの人気は続き、より生物的な表現で仕上げられたガレージキットが売り出されることになるんだ。

プラモデルの展開という点でダンバインはどうだったんだ?

ザブングルの頃から推して知るべしといったところだな。ダンバインはオーラバトラーの身長が10m程度だったから、ダグラムと同じ1/48と1/72で展開されたんだ。
1/72の方は、番組中盤に登場したレプラカーン以降が厳しいが、それでもビルバイン、ボチューン、ズワァースが発売されているのだから健闘したといえるかな。ただ、後半主人公のライバルキャラであるトッドが乗騎していたビアレスやライネックが発売されなかったことで、ファンの間に不満があったのは確かだな。
それに、途中から黒騎士やミュージィらのライバルキャラは、ガラバやブブリィといった非人型兵器に乗騎するようになり、そこまで含めて考えると、やっぱり番組後半のメカは薄いと言わざるを得ないかな。
1/48に至っては、番組初期のビランビーまでに加え、辛うじてビルバインがキット化されたのみで苦しい展開となったんだ。

後半は非人型も大活躍したんだな。最後まで残ったライバル黒騎士の乗騎がガラバだったってのは、シャアがジオングでなくビグロでアムロと対峙したと思えばいいのか?

ビグロを操るシャアか...それはそれで見たい気がする。
ダンバインの話はこのくらいにしといて、次は「装甲騎兵ボトムズ」だな。これはある意味ダンバインとは真逆の方向性を打ち出した作品と言える。

現行機械的な「リアル」を極端に推し進めたんだな。ロボットのサイズは4m程度とこれまでのシリーズからすると破格に小さい。でもパワードスーツじゃダメだったのか?

アニメにパワードスーツを出すと演出上問題が出てくる。パワードスーツで、ガンダム最終話のように頭部と左腕を吹っ飛ばされながら敵を撃墜する、みたいな演出は可能かな?

アムロの頭と左手も一緒に吹っ飛ばされるな。なるほど、それで搭乗型ロボットというコンセプトはそのままなわけか。

そういうこと。
ボトムズのAT(アーマードトルーパー、ボトムズに登場するロボットの総称)の身長が4m程度というのは、搭乗型ロボットの最低サイズというコンセプトによって決定されたサイズなんだ。

でもロボットを小さくすることが「リアル」につながるのか? 小さければ良いというものでもないだろう。

実物大で展示されたモビルスーツのオブジェを見たかい? あれを実際に運用するとなるとどれだけ大変かは想像できるよな。それが自動車サイズであったとしたらどうだろう?小さいってだけで手が届きそう、つまりリアルさの演出になるわけだ。
それから、ボトムズでは、もう一つ設定上の新機軸を取り入れている。それは、主人公は主人公機を持たない、ということだ。主人公が乗るのは、この世界で最も一般的に運用されている「スコープドッグ」タイプのATなんだ。

主人公が量産機に乗るというのは、これまでになかったコンセプトだな。だが、主人公が量産機に乗るとなにかいいことあるのか?

演出上の制約が少なくなる。前作のダグラムとの比較で考えてみようか。
主人公が自分よりも強い機体、強いパイロットと遭遇したとする。当然主人公機は滅茶苦茶に打たれるわけだが主人公機が撃破されるわけには行かないよな。

ダグラムに乗るクリンが24部隊に始めて出会った場面だな。ウェーブ大地を巡る戦いでもダグラムは一方的に打たれていたが、コクピットでクリンが「ウァァァァァァァ!」って叫ぶだけでダグラムはほぼ無傷だった。ウェーブ大地では右腕のアクチュエータ故障を引き起こしていたようだが。
なんにせよありえないレベルでの主人公機補正が必要になってくるな。

そう、主人公機を撃破されない、一方で相手の強さをアピールしたい、これを両立するために演出上のダグラムはありえないほどの重装甲にせざるを得ない部分があった。そして見ている側からすれば、それは全然リアルじゃない。
主人公は専用機ではなく量産機を使うという設定にすれば、こうした問題は解決できる。主人公よりも強い相手が出てきたら、主人公機をぶっ壊して、主人公は命からがら逃げる、なんて演出もできるわけだ。

それに、主人公とロボットとの心理的な距離感も変わってくるな。やっぱり専用機だったら主人公もそれなりに愛着も湧くだろうし。
ダグラム最終話の「ダグラムは、僕の全てだァァァ!」ってアレだな。

ボトムズではそういった自機への愛着らしきものは一切ない。主人公が自分の行動の足かせになると考えればすぐに捨てる。機体の取得にしても、その辺にある機体を使う、くず鉄になってる機体を修理して使うなどロボットを徹底的に道具として扱うんだな。
これはロボットの設定だけでなく、主人公の性格による部分もあるんだけどね。主人公はプロの軍人でタフで無口という設定だ、ロボットは他の兵器同様道具でしかないし、必要であればなんとしてでも入手し、必要がなければ惜しげもなく手放す。

ロボットそのものにヒーロー性を求めない。主人公は量産機を使うという設定の面白さは分かった。しかし、アニメの絵的にはどうなるんだ? 同じロボットが並んで戦ったらどのロボットが主人公機かわからなくなるんじゃないか?

ボトムズでは、そこは半分諦めつつ、可能な限り分かりやすい画作りを試みているように思える。例えば、主人公は保守的で慣れた機体を好むということにして、できるだけ普通のスコープドッグタイプを使うようにしている。
例えば、湿地帯を舞台にしたクメン編では、水陸両用型の新型ATではなく、性能的に劣るスコープドッグの派生型をあえて使うことで、主人公の搭乗機は一目で分かるようにしているんだ。レッドショルダー時代を描いたOVA作品などに見られるが、他のメンバーと同じ機体を使う場合でも、他のメンバーのカスタム機と比較して、主人公はノーマルに近いカスタム機に搭乗させることで他の機体との外見上の差別化をしているんだ。

主人公以外の機体の個性を色濃くすることで、無個性な機体である主人公機がかえって目立つってことか。面白いな。

ロボット設定上の新機軸の話ばかりになっていたので、模型の話をすると。ボトムズシリーズは大きい方が1/24で小さい方が1/35スケールで展開された。大きい方が自動車模型のスケール、小さい方は戦車などのミリタリーの標準スケールだな。

1/35はダイオラマに使えそうな素材には困らなさそうだ。ドラム缶やジェリカン、土のうやバリケード、何でもあるからな。

1/24のシリーズはハッチを開閉してコクピットが再現されているという当時としては相当に凝ったキットだったんだ。伝説的な出来と言っていいだろう。今ではバンダイの1/20があるからそっちを買えばいいけどな。

21世紀に入ってから新作が作られ、今でも楽しめるってのはいいな。バンダイの1/20のスコープドッグ作ってみるか。

そういう意味ではダンバインも恵まれている。1/35のダンバイン、1/72スケールでは、ビルバイン、ズワース、ビアレス、ライネック、レプラカーンが新設計でプラモデル化されてる。作って楽しむならこっちもオススメだな。

ボトムズのプラモデルは、シリーズ展開的にどうだったんだ?

プラモデルのシリーズ展開はかなり苦しかったな。そういう意味ではダンバインと同じだ。1/24はスコープドッグと派生型、スタンディングトータスとその派生型しかキット化されなかった。1/35でも中盤に登場したストライクドッグまでで打ち止め、後半に出てきたファッティー、ツヴァーク、ベルゼルガDT、ストライクドッグは販売予告すら出なかった。

それは厳しいな。何がまずかったんだ?

これはボトムズに限った話ではないのだが、理由の一つはアニメの放映開始から最初のプラモデルが発売されるまでのタイムラグかな。
例えば、ボトムズだと1983年の4月に放映開始、1/24のスコープドッグが出たのが7月頃、1/35の展開は更に遅れて9月頃だった。9月というのは番組放映開始から半年後ってことになる。そうなると、番組後半に登場するロボットのキットは番組終了後数カ月後に発売になるわけで、その頃には次のシリーズの中盤ごろ、まあよほど好きでなきゃシリーズ後半のロボットなんて買ってくれないよな、って読みがメーカー側にあったんだと思う。あるいは、ダグラムなりザブングルの売上の推移に基づく予測だな。

番組制作とプラモデルメーカーで連携して、番組放映開始時点でプラモデルが間に合うようにできればいいんだがな。
まあ、ガンプラは放映終了後だけどブームになった、って事例はあるにせよ、できることなら番組放映とプラモシリーズの展開は同時が望ましいな。

ま、今更理想を言っても仕方ない。
ダンバインにしてもボトムズにしても、先のSF3Dやマクロスとは違う形で後世に影響を与えることになったんだよ。それが、放映終了から20年以上経ってもう一度新規にプラモデルが開発されることに繋がるんだ。
ダンバインは、「リアル」の有り様に新たな可能性を示した。また、日本にファンタジーの世界を定着させることに少なからず貢献をしたんだ。
ボトムズは根強いファンとともに時代を生き抜き、21世紀になっても新作が作り続けられる土壌を育てた。他のシリーズと違い、ボトムズは主要メンバーそのままで生き残り続けているんだ。他のシリーズで主人公が不動のものは存在しない、ボトムズの生き残り方は形をそのままで深海に行き続けたシーラカンスのような生き残り方なんだ。
8. ガンダム再び

1983年に放映開始された他のアニメの話の前にガンプラの話をしようと思う。

うむ。
バイファムは見ていたけどプラモ買わなかったから語るネタがないって話だろ? 分かるぞ。モスピーダやオーガスは見てもいないからな、分かるぞ。

まあ、そういう事情もあるんだが、友人達が盛り上がっていれば、そういった空気感を実体験として語ることはできるよ。でもねー、仲間内でモスピーダで盛り上がってるって話は聞いたことないし、オーガスもマクロスと比較するとそれほど盛り上がっている印象はなかったんだ。つまり本当に語ることがないんだな。
大体、ビデオが一般家庭に普及していないのに、日曜日の午前8時とか午後2時から放映とかやめてほしいよな。たまの休日のそんな時刻、子供は外で遊んでるに決まってるだろ。そんなわけで、モスピーダもマクロスもオーガスもリアルタイムでは見てないんだ。

分かった分かった。で、何故ガンダムなんだ?

一度、劇中のメカのほとんどを模型化してしまい、ネタが切れてしまったガンダムなんだが、旧キットにデカールを付属させてミリタリーチックな色指定をしたリアルタイプシリーズや、本編に未登場のモビルスーツをキット化するなど細々とガンダムを続けていたんだな。
ガンプラブームのきっかけの一つである 「HOW TO BUILD GUNDAM」 の中に、大河原邦男氏による各モビルスーツの派生型のイラストをネタにフルスクラッチした記事があったんだ。当然、プロのモデラーが量産型のザクなどからスクラッチしていたんだが、これらのデザインがやたらにカッコよくてね、これのキット化を望む声があったんだよ。

本編に出てこない、設定にもない、そんなものをキット化して売れるのか?

当のバンダイもそう考えた。そこで、リアルタイプなどを試験的に市場投入し、それらの結果を踏まえてオリジナルイラストのメカ群をキット化することにしたんだ。これがモビルスーツバリエーション(MSV)だな。
発売時期としては、1/100ウォーカーギャリア発売中止のちょっと後くらいかな。1/144のウォーカーギャリアが発売されたのとほぼ同時期だ。

でも、旧キットに新パーツのランナーを足した程度のものだろ? 同時代の他のシリーズと比較して見劣りしなかったのか?

それが、全て新規開発のパーツなんだ。つまり、それまでに蓄積されたノウハウを全て投入したものとなっている、同じザクでも全くの別物だ。

ザクとは違うのだよ! ザクとはァァァァ!!
いや、ザクのバリエーションなんだけどね。

店頭で箱を開けて中身を見たときの別物感はただ事ではなかったね。昔、雜誌の作例で見たザクII(今はザクIIというと普通のザクだが、当時はザクIIといえば脚にバーニアをつけた高機動型を指した)がこうしてキット化されてしまったわけだから。

で、このシリーズは売れたのか?
ガンダムは既に放映自体は終了している、設定だけのアイテムが売れるとは思えないがなあ。

HOBBY JAPAN誌のコーナー企画だった「SF3D」が支持されたでしょ? コンテンツとして優れていればアニメでなくてもいいんだよ。ただ、説得力のある設定は必要だ。そこで、黒い三連星がドムに乗る前に使っていた、なんて後付設定を起こすわけだな。
結果としてこのシリーズは十分な成功を収め、第2弾へとつながっていくんだ。アニメロボットのシリーズ展開が後半尻すぼみになるのとは対照的だな。
つまり、ガンダムはまだコンテンツとしての伸び代があったんだよ。

だとすると、シリーズ展開準備中のダンバインと競合したりしないのか?

当時のオトナの事情はよくわからないけど、そういうことはあったかも知れない。MSVの開発がザブングルの後期ウォーカーマシンの開発をストップさせた、とか、思った以上にMSVの売れ行きが良かったのでダンバインのシリーズ展開のリソースをMSV展開に振り向けたなど、なかったとは言えないな。

リアルロボットの敵は、リアルロボットだったというわけだな。
9. 実りの年、1983年

リアルロボットアニメの放映開始本数から言えば、実は1983年は実りの年と言える。リアルロボットアニメの放映開始時期を年表形式にまとめてみた。
1981年 10月「太陽の牙ダグラム」(1981.10-1983.3)放映開始
1982年 2月「戦闘メカ ザブングル」(1982.2-1983.1)放映開始
10月「超時空要塞マクロス」(1982.10-1983.6)放映開始
1983年 1月「亜空大作戦スラングル」(1983.1-1984.1)放映開始
2月「聖戦士ダンバイン」(1983.2-1984.1)放映開始
4月「装甲騎兵ボトムズ」(1983.4-1984.3)放映開始
7月「超時空世紀オーガス」(1983.7-1984.4)放映開始
10月「機甲創世記モスピーダ」(1983.10-1984.3)放映開始
「特装騎兵ドルバック」(1983.10-1984.7)放映開始
「銀河漂流バイファム」(1983.10-1984.9)放映開始
1984年 2月「重戦機エルガイム」(1984.2-1985.3)放映開始
4月「巨神ゴーグ」(1984.4-1984.9)放映開始
「超時空騎団サザンクロス」(1984.4-1984.9)放映開始
10月「機甲界ガリアン」(1984.10-1985.3)放映開始
1985年 3月「機動戦士Zガンダム」(1985.4-1986.2)放映開始
10月「蒼き流星SPTレイズナー」(1985.10-1986.6)放映開始
1986年 3月「機動戦士ガンダムZZ」(1986.3-1987.1)放映開始
1987年 2月「機甲戦記ドラグナー」(1987.2-1988.1)放映開始

これが「夏至の後に夏が来る」ってやつだな。1/100ウォーカーギャリア発売中止のアナウンスが3月か4月頃だから、1983年全体が夏って感じになるのかな。
でも、放映作品本数だけ多くても意味ないんじゃないか?

まあ、作品数だけで語ることは出来ないし、個別の作品を見るとリアルロボットアニメに分類していいかどうか悩む作品もあるんだけどね。
それはともかく、アニメ企画なんてそう簡単にできるものじゃないからね、リアルロボットアニメに商機を見出した人が増えたからこそ、アニメの放映本数が増えたんだ。
アニメの企画スタートから放映までは1年位かかることを考えると、1983年10月期の新番組ラッシュは、1982年の10月頃、マクロスの放映開始あたりに企画が始まったものだと思う。

やはりマクロスの影響はあるんだろうな。直接的な後継番組であるオーガスだけでなく、モスピーダもドルバックも変形メカだ。

変型ギミックに関しては、リアルであることと相反する要素だったんだ。ザブングルでは、主人公メカであるザブングルが「玩具っぽい」と言われていたからね。
それが、マクロスで一変したんだな。現用戦闘機であるF-14に似た戦闘機がロボットに変型するギミックをファンが受け入れた結果、リアルロボットにおける変型ギミックがアリになったんだ。

そういえば、バイファムは変型メカは登場しないんだな。

バイファムはメカデザインに関しては正統的かつ演出も真面目だな、プラモデルも総じて出来が良く好感が持てる。作ったことはないんだけどね。友人が作った完成品を見たり、店頭で箱を開けてチェックしたりして出来の良さを感じたものだ。
ただ、どういうわけか自分はバイファムのキットを欲しいと思ったことはないんだよな。だから結局買わなかった。アニメはすごく楽しみにしながら見ていたけどね。あれはいい作品だ、いいものはなくならない。

思い出に浸っているところすまん、プラモの話を続けてほしいんだが。

バイファムシリーズのプラモデルは総じて出来が良いと言ったが、それだけでなく可動部にポリキャップを採用していたんだよ。

ポリキャップなんて当時だってそんなに珍しくはないと思うんだが…

バイファムのキットはガンダムと同様、上を1/100下を1/144スケールで展開したんだが、1/144スケールのシリーズにも標準でポリキャップを実装したんだ。当時価格で400円とか500円くらいのシリーズでポリキャップを実装というのはそれなりに画期的だったんだよ。

他作品、例えばオーガスに関しては何かないの?

オーガスの本編は見たことがないんだが、プラモデルはいくつか組み立てたことがあるよ。友人から要らなくなったキットをもらったときかな。完全変形のオーガスのキットを組み立ててみたんだが、可動部がよく工夫されていると感じたよ。イマイ製だったかアリイ製だったかすら覚えていないんだけど、思ったより組み立てやすく出来は良かった。
ただねー、戦闘機形態がスマートじゃないしノーズは尖ってないしでイマイチ、ロボット形態もイマイチ、要するに変型のためのデザインであってカッコよくないんだよな、ってのが当時の印象。
あと、イシュキックだったかな、ウォーカーマシンとは違った非人型の二脚ロボットというのは面白いと思ったんだけど、いや、新しいとは思ったけど面白いとは思わなかったかもな、とにかくあまり作る気が起きなかったんだよな。なんでだろう?

そう考えると、ロボットのデザインって難しいな。リアルロボットにおける魅力ってのは、リアルでカッコ良い、とシンプルなんだけどな。イシュキックはダメでウォーカーマシンはOKって理由を説明するのは難しいかもな。

モスピーダは完全に接点がなかったのでパスするとして、残りはドルバックかな。実はドルバックのアニメは少し見ていたんだ。面白くはあったけどプラモデルを作ろうという気にはならなかったのだが。
ただ、当時のドルバックのプラモデルの受け入れられ方はちょっと変だったよ。主人公達が乗る変型メカは完全に放っておかれていて、劇中に登場するパワードスーツばかりが注目されていた気がする。ここにも「SF3D」の影響みたいなものを感じるな。そういや、ドルバックに出てくるパワードスーツはSF3DのPKAに似ている。

てことは、結局1983年放映のリアルロボットアニメでまともにプラモを作っていたのはボトムズだけってことか。

そうだな。1983年中頃まではダグラムとザブングル、それ以降はボトムズ一本だったな。ロボットでないプラモデルはたくさん買っていたけどね。
多分、この頃から自分の中でプラモデル購入の優先順位が変わったんだと思う、その結果ロボットに割けるリソースが減ってきたんだ。1/35のボトムズのプラモデルを買って、同じ1/35ということでミリタリー物に手を出したら、そっちが面白くなってしまったんだな。

雑食系モデラーに戻っていったんだな。

そういうことかな。いや、1/35のボトムズのキットをきっかけにミリタリーモデルに触れて、ミリタリー物にも関心を持つようになったのだから、もう一つ好きな分野が増えたというべきだな。

個人的な思いは置いといて、長くなったので1983年という年をまとめてみよう。
1983年は、リアルロボットアニメブームにおける「夏」だったと言える。1/100ウォーカーギャリア発売中止事件という「夏至」の存在、前年から続くダグラムのプラモデル展開は1983年にピークを迎え、新たなリアルロボットアニメの放映開始数が最大となった年でもあった。
と同時に、リアルロボットアニメブームが永遠に続くわけではないことを実感する年でもあった。ザブングル、ダンバイン、ボトムズにおけるプラモデルシリーズ展開が先細りになり、人気シリーズとそうでないシリーズの差が見え始めたのもこの頃だった。
あと、MSVの好調によって、ガンダムのコンテンツとしての強さが明らかになったってことかな。

リアルロボットのプラモデルを購入していたのは子供たちだから、当然使えるお金には限りがあり、アニメ作品数が増えても全てのプラモデルシリーズをフォローすることは出来ない。
そこで、自分の小遣いでどのロボットのプラモデルを買うかの取捨選択が始まるわけだ。その結果、売れるプラモデルと売れないプラモデルの差が生じる、個々のプラモデル単位ではなく、シリーズ単位でそれが起こる。
それが、リアルロボットアニメの放映数、プラモデルの開発を行うメーカー数を減らす結果になるのだな。

その通り。だが、それが形となって現れるのはもう少し先、1983年はその兆しが見えてきた、という位の段階だな。1983年10月期に放映開始された3作品のプラモデル展開の帰趨がハッキリするのは、本格的にプラモデルシリーズが動きだす1984年に入ってからなんだ。
その先の話は次回ということにして、今回はここまでにしようと思う。

うむ。それでは、また次回に。
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